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低消費電力・高速MOSFET技術

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■体裁:A4判、154ページ
■発刊:2002年6月
■ISBNコード:

【著者】
前田茂伸 三菱電機(株)ULSI技術開発センター

※著者の所属は発行当時のものです。

【概要】
シリコン(ケイ素, Silicon, Si)は地球上に酸素についで2番目に多く存在
する元素である。重量パーセントにして地殻の25.8%がシリコンからなる。
例えば, 花崗岩などに含まれる最もポピュラーな鉱物の石英は酸化シリ
コン(SiO2)である。このシリコンを使って半導体デバイスが作られ, それ
があらゆる産業を支えている。また, コンピュータや携帯電話などあらゆ
る電化製品の心臓部が, どこにでもある「石」から作られていると考えると,
半導体産業は究極の付加価値を生み出す魔法の産業とも言えるし, 神
秘的な感じさえする。筆者が半導体に興味をもち, その研究の世界に足
を踏み入れたのは, この点に魅了されたからであり, その思いは今もな
お持ちつづけている。環境問題が, 無視できない地球規模の課題になり,
世の中がエコロジーを意識したものに変わっていく中で, 普遍的な材料
であるシリコンは, 今後の産業において, より重要な役割を演じ続けてい
くことは間違いないであろう。

しかしながら, 半導体は, エネルギ消費の観点では非エコロジカルなも
のに変貌しつつある。いかにシリコンという材料が普遍的であっても, エ
ネルギ消費が大きければ, その魅力は相殺され, 将来別の技術に取っ
て変わられる可能性もある。筆者は,1990年に三菱電機株式会社に就
職して以来12年間, 低消費電力・高速MOSFET(Metal Oxide Semi-
conductor Field Effect Transistor)の技術に関わってきた。特に, 現在
携帯電話に不可欠な部品となっているSRAM(Static Random Access
Memory)に使われている多結晶シリコン薄膜トランジスタ(Thin Film
Transistor=TFT)と, 今後の論理LSIを高速・低消費電力化する技術と
して期待されているシリコン・オン・インシュレータ(Silicon On Insulator
= SOI)デバイスの開発に携わってきた。これらのデバイスには, シリコ
ン・オン・インシュレータという言葉にあるように,絶縁膜上に形成された
シリコンMOSFETという共通点がある。本書は, これらのデバイスの開発
の中で生まれた研究の成果を博士論文「絶縁膜上のシリコンMOSFETの
信頼性とLSI応用に関する研究」としてまとめたものを, 若干の加筆修正
をして, 本として出版することにしたものである。

12年間という比較的長期間の研究成果をまとめているため, 本書の中に
は, 当時としては主流の技術であったことも現在では傍流の技術になっ
ているものもある。本書の中には, はじめに論文発表した時点での視点
で記述されている部分がある。読者の方には, 現状と異なると違和感を
覚える可能性があるが, オリジナリティを主張する博士論文の性質上の
ものと理解して頂きたい。例えば, 最近では多結晶シリコンTFT負荷型の
SRAMは, 徐々にフルCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)
型のSRAMに置き換えられつつある。こうした点に関しては, できる限り
各章のまとめや結論の章にて, 最新の動向や今後の展開などを示して
いる。(「はじめに」より抜粋)

【目次】

◆第1章 なぜ低消費電力デバイスか?   
1.1 スケーリング則と絶縁膜上のMOSFET   
1.2 多結晶シリコンTFT負荷型SRAM   
1.3 多結晶シリコンTFTの構造とデバイス物理   
1.4 SOIデバイスの特徴   
1.5 SOIデバイスのフローティングボディ効果   
1.6 まとめ   

◆第2章 多結晶シリコンTFTにおけるBTストレス信頼性   
2.1 BTストレスはなぜ重要か?   
2.2 BTストレス劣化モデル   
2.3 単結晶シリコンの場合のBTストレス劣化   
2.4 多結晶シリコンの場合のBTストレス劣化   
2.5 TFTの構造とBTストレス実験   
2.6 BTストレス実験の結果とモデルの検証   
2.7 他のモデルの検討   
2.8 多結晶シリコンTFTの特性の確率論的なバラつきの考察   
2.9 バラつき評価実験   
2.10 初期しきい値と-BTストレスによるしきい値シフトのバラつき   
2.11 バラつきのモデル化   
2.12 多結晶シリコンの欠陥と水素のかかわり   
2.13 まとめ   
2.14 今後の課題と展開   

◆第3章 ボディ固定型SOIデバイスのデバイス物理   
効果解消法   
3.1 SOI MOSFETのフローティングボディ効果とは?   
3.2 ボディ固定型SOIデバイスとフローティングSOIデバイスの比較   
3.3 高速動作時のボディ抵抗の影響   
3.4 過渡的にボディ電位を変動させる要因の大きさ見積もり   
3.5 過渡的なフローティングボディ効果に関するデバイス設計指針   
3.6 過渡的なフローティングボディ効果の解決   
3.7 ボディ固定型SOI MOSFETにおける基板バイアスの影響の考察   
3.8 ボディ固定型SOI MOSFETの基板バイアス効果に関する実験結果   
3.9 完全空乏化時のソース・ドレイン耐圧の考察   
3.10 完全空乏化時のソース・ドレイン耐圧に関する実験結果   
3.11 基板バイアス効果を考慮したデバイス設計指針と回路動作に与える影響   
3.12 まとめ   
3.13 ボディ固定SOIデバイスの設計指針   
3.14 今後の課題と展開   

◆第4章 フローティングSOI MOSFETのホットキャリア寿命予測法   
4.1 フローティングSOI MOSFETのホットキャリアによる特性劣化   
4.2 ホットキャリア寿命の予測のコンセプト   
4.3 正孔電流の見積もり   
4.4 ホットキャリア寿命予測方法   
4.5 モデルの検証   
4.6 まとめ   
4.7 今後の課題・展開   
4.8 ボディ固定SOIデバイスとフローティングSOIデバイスの将来性について   

◆第5章 絶縁膜上のMOSFETの他の応用   
5.1 多結晶シリコンTFT技術のDRAMメモリセルへの応用   
5.2 DRAMメモリセルサイズ縮小のトレンド   
5.3 縦型Φシェイプ・トランジスタ(VΦT)を用いたDRAMセルの特徴   
5.4 VΦTのプロセスフロー   
5.5 VΦTの可能性   
5.6 SOIデバイスのRFアナログ分野への応用   
5.7 RF/アナログ応用に対するSOI構造のメリット・デメリット   
5.8 高抵抗基板とハイブリッド・トレンチ分離を用いたSOI構造   
5.9 RF/アナログ性能の検証   
5.10 まとめと今後の課題・展開   

◆第6章 結 論   
6.1 各章の結論   
6.2 今後の課題と展開
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