商品コード:
RLB100066
入門モーメント法による移動通信用アンテナ技術
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31,900
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■体裁:A4版140ページ
■発刊:1997/02/28
■ISBNコード:4-947655-96-8
【編集委員】
築地武彦 福岡大学
【執筆者】
築地武彦 福岡大学
【序文】
最近のエレクトロニスにおける技術の進歩は目覚ましく, 回路の集積化と, ディジィタル化が日進月歩というより秒進分歩の速さで進んでいる。
その影響は通信の分野にも現れており, 小型で, 軽量でしかも安価な携帯電話やPHSが提供され, 現在に見られる様に驚異的な普及を持たらしている。
1864年にマックスウェルによって電磁波の存在が予測され, 1888年, ヘルツによってその存在が実験的に確かめられた後, 1896年にマルコニーによって無線通信が開始されて以来すでに100年以上を経ている。アンテナは, 無線通信の開始以来あらゆる通信に重要な役割を果たし, 今でも携帯電話やPHS等の移動通信において欠かすことのできない重要な装置のひとつであるが, 小型化や高性能化が望まれているにもかかわらず, いまだに素材や形状にあまり顕著な変革が見られていない不思議な存在でもある。
その原因は, アンテナから電波が放射される現象が, マックスウェルの方程式を基に理論的に説明されても, いまだにそれを定性的に上手く説明する方法が見つかっていないところにあると思われる。また, 従来, アンテナの研究は, 与えられたアンテナに対するマックスウェルの方程式を如何に解析的に解くかという理論解析に重点がおかれていたため, アンテナの理論は難解であるという印象がもたれていたことは否定できない。
しかし, 導線に電源を接続すると電波は放射されアンテナとして動作するので難解な理論には捕らわれなくとも特性の良いアンテナをむしろ実験的な方法で開発することは不可能ではない。
そして, アンテナとはマックスウェルの方程式を基礎とする解析理論には捕らわれずに, 経験的に対応するものであるという傾向がないわけではなく, 例えば, ループアンテナの一種であるにもかかわらず, 「ヘンテナ」とか「スケルトンスロット」等とアンテナの動作原理などとはかけ離れた名前がアンテナに付けられ, 利用されている。
しかし, 過度の経験的な手法に依存する開発は, 動作原理は類似のアンテナであるにもかかわらず外見が少し異なるだけで別々のアンテナとして取り扱うなどアンテナの研究開発に混乱をもたらす結果ともなり, できるだけ正しいアンテナの理論に基づく開発が望まれている。
それでも, 最近のコンピュータの演算速度の高速化と記憶容量の大容量化に伴って普及したモーメント法はアンテナの研究開発の歴史において新たな一ページを加えるに至っている。
すなわち, 最近のモーメント法を利用すれば, 任意の構造のアンテナと言えどもその電流分布なとが数値的にかなり正確に求められて, アンテナの放射特性, インピーダンス特性などアンテナの動作原理は詳しく解明される。
ひとつのアンテナの動作原理が明らかになると, それを変形して種々の通信に応用するために, 必要な特性の新しいアンテナを開発することも可能になり, 最近の通信の多様化に対応した優れたアンテナの開発も可能になってきている。
本書は, モーメント法を使って解析した(移動通信アンテナのような)比較的小型に属する線状のアンテナを例に, これまで難解であると思われていたアンテナをできるだけ易しく, 系統的に説明しようとするものである。
はじめに, 導線に高周波電流を流した場合の電子運動を定性的に説明し, 伝送線路と, そこに生じる定在波について説明する。すべてのアンテナは, 先端を解放した伝送線路, または先端を短絡した伝送線路を基に変形したものであるが, 2章では先端を解放した伝送線路の変形であるダイポールアンテナとモノポールアンテナについて説明する。4章では, 先端を短絡した伝送線路の変形であるループアンテナについて説明する。このアンテナはダイポールアンテナと同様に基本アンテナのひとつでありながら, やや複雑なためその特性はまだ十分に明らかにされていない。ここでは, さまざまな形のループアンテナについてその諸特性を明示している。
また, 従来, 伝送線路そのものがアンテナとして利用された例は少ないが, 最近, 移動通信用の低姿勢アンテナとして伝送線路に近い構造のアンテナが注目をあつめている。5章では, 最初, 伝送線路型の低姿勢アンテナである逆Lアンテナを説明するが, つづいて, 先端短絡の伝送線路を変形して新しく提案した変形伝送線路アンテナと, このアンテナを応用した移動通信用のアンテナについて紹介する。この章の最後では, 変形伝送線路アンテナを利用した携帯電話用アンテナも紹介する。
本書で紹介するアンテナの諸特性はほとんどモーメント法による数値的解析で得られた結果であり, 実測結果との対比は示していないがほとんどのものは実測結果により確かめられたものである。これらの結果を参照して実際にアンテナを作成してもかなり良い精度で再現できるが, これからの本格的なアンテナの開発, 設計にはモーメント法の利用は避けられない。
本書の最後では, 信頼性の高い解析結果が得られるハレンの積分方程式を利用するモーメント法についても解説している。
本書は, 電気回路等の専門の基礎知識は習得され, これからアンテナについて勉強されようとしているか, またはこれまでにアンテナについて勉強したがあまり良く理解できなかったと思われている通信関係の技術者を対象としている。
本書がアンテナの理解に少しでも役立ち, 新しいアンテナの開発の手助けとなれば幸いである。
最後に, 本書の出版の機会を与えられたリアライズ社の相澤孝美氏に心より感謝する。また, 本書のアンテナ資料の一部として, 研究成果を提供いただいた, 当電波研究室の藤, 公文, 山崎氏, そして著者のこれまでのアンテナの研究の折々にご鞭撻いただいた元福岡工業大学学長の森延光先生にこの場をかりて深謝したい。
なお, アンテナのモーメント法の計算には福岡大学電算センターを利用した。
【目次】
はじめに
1.アンテナ特性のやさしい捉えかた
1.1 導線上の高周波電流
1.1.1 電子の進行波, 反射波
1.1.2 定在波電流
1.2 電波の放射
1.2.1 電波放射の原理
1.2.2 グリーン関数
1.2.3 直線導線からの放射
1.2.4 指向性関数と指向性合成
1.3 アンテナの電気回路的特性
1.3.1 伝送線路理論
1.3.2 先端解放と先端短絡の伝送線路
1.3.3 アンテナの入力インピーダンス
2.ダイポールアンテナとモノポールアンテナ
2.1 ダイポールアンテナ
2.1.1 伝送線路とアンテナ
2.1.2 ダイポールアンテナの放射特性
2.1.3 ダイポールアンテナのインピーダンス特性
2.1.4 アンテナの相似の定理
2.2 イメージアンテナとモノポールアンテナ
2.2.1 イメージ法
2.2.2 ストリップ線路
2.2.3 モノポールアンテナ
2.2.4 モノポールアンテナの指向性, インピーダンス特性
3.装荷モノポールアンテナ
3.1 方形ループ素子モノポールアンテナ
3.2 ローディング(装荷)による小型化
3.2.1 容量性装荷
3.2.2 誘導性装荷
3.2.3 同軸スタブ装荷モノポールアンテナ
3.3 同軸スタブ装荷による2周波アンテナ
4.ループアンテナ
4.1 ループアンテナの定義
4.2 方形ループアンテナ
4.2.1 方形ループアンテナの電流分布
4.2.2 方形ループアンテナの放射特性
4.2.3 インピーダンス特性
4.3 種々のループアンテナ
4.3.1 矩形(長方形)ループアンテナ
4.3.2 菱形ループアンテナ
4.3.3 円形ループアンテナ
4.4 三角形ループアンテナ
4.4.1 三角形ループアンテナの指向特性
4.4.2 三角形ループアンテナのインピーダンス特性
5.変形伝送線路型アンテナ
5.1 伝送線路型アンテナ
5.1.1 伝送線路型アンテナの構成
5.1.2 伝送線路型アンテナの放射特性
5.1.3 インピーダンス特性
5.2 伝送線路型アンテナと板状逆Lアンテナ
5.3 変形伝送線路アンテナ
5.3.1 変形伝送線路アンテナの基礎
5.3.2 MTLA(Modified Transmission Line A
ntenna)
5.3.3 ジグザグ伝送線路アンテナ
5.3.4 積層変形伝送線路アンテナ
5.4 携帯電話用変形伝送線路アンテナ
5.4.1 携帯電話用変形伝送線路アンテナの構成
5.4.2 携帯電話用変形伝送線路アンテナの放射と指向特性
5.4.3 インピーダンス特性
5.4.4 整合回路
6.モーメント法
6.1 線状アンテナの積分方程式とモーメント法
6.1.1 モーメント法について
6.1.2 基礎方程式
6.1.3 積分方程式から代数方程式への変換
6.1.4 展開関数
6.2 ハレンの積分方程式を利用するモーメント法
6.2.1 ハレンの積分方程式
6.2.2 ラグランジェの補間多項式による電流の近似法
6.2.3 素子の電位に関する補助方程式
6.2.4 境界条件
6.3 モーメント法計算の問題点
6.3.1 線径に関する考察
6.3.2 アンテナの構造に関する考察
6.4 ワイヤーグリッド法
参考文献
索 引