商品コード: RLB223016

最新のゲノム編集技術と用途展開

販売価格(税込): 63,800
ポイント: 580 Pt
メーカーURL: https://www.cmcbooks.co.jp/
■体裁:B5判・240頁
■発刊:2021年2月8日
■ISBNコード:978-4-7813-1586-7
■シーエムシー出版

【監修】
山本 卓

【刊行にあたって】
ゲノム編集(Genome Editing)は、生命の遺伝情報を自在に書き換える技術であり、近年様々な分野(微生物の改変、農水畜産物の品種改良、創薬や治療)で利用が進んでいる。既存の遺伝子組換え技術の適用が難しかった生物種においても、ゲノム編集での遺伝子改変が可能となり、微生物から動物・植物で多くの研究成果が発表されている。特に2012 年に開発されたゲノム編集ツールのCRISPR-Cas9は、簡便かつ高効率であることから世界中の研究者に一気に広がった。CRISPR-Cas9の開発者であるダウドナ博士とシャルパンティエ博士には2020年のノーベル化学賞を授与され、ゲノム編集への期待は益々高まっている。CRISPR-Cas9は、正に夢のバイオテクノロジーであり、その可能性は無限大である。

本書では、基礎の技術開発から応用研究開発に至る広い分野でのゲノム編集研究の現状と展開について、国内トップクラスの研究者に執筆をお願いした。ゲノム編集の原理から基盤技術、新しい編集ツールや発展技術について国内の開発研究について理解いただけるものと思う。さらに産業分野で注目される微生物、農作物、水畜産物でのゲノム編集の研究は、商業利用の可能性を示している。また、医療の分野ではゲノム編集の治療での可能性とヒト受精胚でのゲノム編集の倫理と規制について専門家に解説頂いた。本書がゲノム編集の基本原理と応用可能性の理解を広げ、様々な分野での積極的な活用につながることを願っている。

山本 卓
(本書「刊行にあたって」より抜粋)

【著者】
山本卓  広島大学
佐久間哲史  広島大学
遊佐宏介  京都大学
太田賢  エディットフォース㈱
中村崇裕  九州大学
大西美輪  神戸大学
光延仁志  神戸大学
西田敬二  神戸大学
吉見一人  東京大学医科学研究所
真下知士  東京大学医科学研究所
和田直樹  徳島大学大学院
刑部祐里子  徳島大学大学院
刑部敬史  徳島大学大学院
堀居拓郎  群馬大学
森田純代  群馬大学
畑田出穂  群馬大学
近藤昭彦  神戸大学
丸山潤一  東京大学
荒添貴之  東京理科大学
栗田朋和  広島大学
野村俊尚  理化学研究所
雑賀啓明  農業・食品産業技術総合研究機構
土岐精一  農業・食品産業技術総合研究機構
大澤良  筑波大学
津田麻衣  筑波大学
島田浩章  東京理科大学
西口満  森林研究・整備機構森林総合研究所
江面浩  筑波大学
安本周平  大阪大学
村中俊哉  大阪大学
立川雅司  名古屋大学
松尾真紀子  東京大学
玄浩一郎  水産研究・教育機構 水産技術研究所
松山倫也  九州大学
大賀浩史  九州大学
堀内浩幸  広島大学
松崎芽衣  広島大学
江崎僚  広島大学
野田大地  大阪大学
伊川正人  大阪大学
根岸洋一  東京薬科大学
韮沢慧  東京薬科大学
髙橋葉子  東京薬科大学
加藤和人  大阪大学

【目次】
【第1編:ゲノム編集技術の概要】

第1章 ゲノム編集の基本原理と今後の展望
1 はじめに
2 ゲノム編集の基本原理
3 遺伝子組換えとゲノム編集
4 ゲノム編集での予期せぬ改変
5 新しいゲノム編集ツール
6 ゲノム編集の新技術と今後の展望
7 おわりに

第2章 ゲノム編集の実践的方法論
1 はじめに
2 ゲノム編集ツール・手法の選択と標的配列の設計
 2.1 ゲノム編集ツール・手法の選択
 2.2 標的配列の設計
3 マテリアルの準備と細胞への導入・選抜
 3.1 マテリアルの準備
 3.2 細胞への導入
 3.3 ゲノム編集細胞の選抜
4 細胞のクローン化と遺伝子型・表現型の解析
 4.1 細胞のクローン化
 4.2 遺伝子型・表現型の解析
5 おわりに

第3章 CRISPR-KOスクリーニング法の開発と応用
1 はじめに
2 遺伝学的手法
3 遺伝学ツールとしてのゲノム編集
4 CRISPR-Cas9システムの順遺伝学への応用
5 CRISPRの様々な技術を使ったスクリーニング
6 スクリーニングのタイプ
7 スクリーニングの実例1 〜急性骨髄性白血病の新規薬剤標的の探索〜
8 スクリーニングの実例2 〜がん細胞株パネルによる網羅的プロファイリング〜
9 おわりに

第4章 ゲノム編集関連技術の産業利用に関する動向
1 はじめに
2 Sangamo Therapeutics社(Sangamo社)
3 Cellectis社
4 CRISPR/Cas9のライセンシング動向
5 Editas Medicine社(Editas社)
6 CRISPR Therapeutics社(CRISPR社)
7 Intellia Therapeutics社(Intellia社)
8 Caribou Biosciences社(Caribou社)
9 ヒト医療分野以外におけるCRISPR/Cas9のライセンシング動向
10 総論

【第2編:ゲノム編集ツールの開発動向】

第5章 DNA二重鎖切断を伴わない塩基編集技術
1 切るゲノム編集の課題
2 切らないゲノム編集技術の開発
 2.1 脱アミノ化反応による塩基編集
 2.2 脱アミノ化酵素とCRISPRの融合
 2.3 塩基編集の高効率化
3 塩基編集の利用法
 3.1 塩基編集の用途
 3.2 塩基編集の標的配列デザイン
 3.3 PAM配列の確認とCas9の選択
 3.4 細胞内へのデリバリー方法とプラスミドの構成
 3.5 塩基編集のオフターゲット
4 派生する技術
 4.1 A/C同時塩基置換
 4.2 C-to-G/A塩基編集
 4.3 Prime editing (PE)

第6章 国産ゲノム編集技術CRISPR-Cas3の特徴とCRISPR診断への応用
1 はじめに
2 タイプI CRISPRとタイプII CRISPR
3 CRISPR-Cas3によるゲノム編集
 3.1 導入される変異の特徴
 3.2 標的特異性
 3.3 医療応用を目指した活用
4 CRISPRを用いた核酸検出法
5 CRISPR-Cas3を用いたCOVID-19迅速診断法
6 おわりに

第7章 高等動植物に利用可能な新規ゲノム編集ツールの開発
1 はじめに
2 新規ゲノム編集ツールの開発動向
3 新しい国産ゲノム編集ツールTiDシステムの開発
4 おわりに

第8章 エピゲノム編集による疾患モデル動物作製法の開発
1 はじめに
2 疾患とエピゲノム異常
3 エピゲノム編集のしくみ
4 エピゲノム編集動物作製法
 4.1 エピゲノム編集したES細胞から作製する方法
 4.2 初期胚でのエピゲノム編集システムの一過的発現による方法
 4.3 エピゲノム編集システムを恒常的に発現する動物を作製する方法
5 エピゲノム編集したマウスの表現型
6 おわりに

【第3編:微生物への応用と用途展開】

第9章 バクテリアでのゲノム編集の有用性
1 バクテリアにおけるゲノム編集の特徴
2 相同組み換え編集
3 バクテリア内在性CRISPRの利用
4 塩基編集(Base editing)
5 転写制御による遺伝子機能操作(CRISPRa/i)
6 おわりに

第10章 麹菌をはじめとする醸造微生物のゲノム編集とその可能性
1 はじめに
2 麹菌におけるTALENを利用したゲノム編集
3 CRISPR/Cas9システムによる麹菌への高効率変異導入
4 ゲノム編集による多重遺伝子改変技術の確立
5 醸造に使用される様々な微生物へのゲノム編集の応用
6 おわりに

第11章 糸状菌におけるゲノム編集技術開発
1 はじめに
2 ゲノム編集ツールの構築・設計・導入
 2.1 CRISPR/Cas9の構築
 2.2 CRISPR/Cas9の設計
 2.3 CRISPR/Cas9の導入
3 糸状菌におけるゲノム編集手法とその特性
 3.1 NHEJ修復を利用したゲノム編集
 3.2 HDRを利用したゲノム編集
4 最新のゲノム編集技術
 4.1 マーカーフリーゲノム編集 (マーカーリサイクリング)
 4.2 異なるタイプのCRISPRの利用
 4.3 CRISPRを用いた転写制御
 4.4 塩基編集 (デアミネース型ゲノム編集)
 4.5 遺伝子ドライブ
5 おわりに

第12章 TALENを用いた微細藻類ナンノクロロプシスでのゲノム編集
1 はじめに
2 ナンノクロロプシスについて
3 CRISPR-Cas9システムを用いたナンノクロロプシスにおける最近の報告
4 Platinum TALENについて
5 ナンノクロロプシス用Platinum TALENの構築
6 Platinum TALEN導入ナンノクロロプシスの変異導入効率の解析
7 2種のall-in-one Platinum TALENベクターを用いたナンノクロロプシス内在性遺伝子の同時変異導入効率の解析
8 Platinum TALEN導入ナンノクロロプシスの表現型解析
9 まとめと今後の課題

第13章 CRISPR RNPを用いたユーグレナでの高効率ゲノム編集
1 はじめに
2 ユーグレナの特徴と有用性
3 ユーグレナにおける従来の遺伝改変技術
4 ユーグレナを対象としたゲノム編集技術の開発
5 今後の展望

【第4編:農作物への応用と用途展開】

第14章 植物ゲノム編集技術の発展
1 はじめに
2 植物ゲノム改変技術
 2.1 Base editor
 2.2 ゲノム編集による標的遺伝子の指向性進化技術
 2.3 植物ゲノム・染色体の改変技術
 2.4 ドナーを利用したゲノム編集技術
3 外来DNAのゲノム挿入を経ないゲノム編集技術
 3.1 直接導入技術
 3.2 細菌を利用する方法
 3.3 ウイルスを利用する方法
 3.4 半数体誘導を利用したゲノム編集(Simultaneous haploid induction and editing, HI-Edit)
4 おわりに

第15章 植物育種の歴史とゲノム編集の登場
1 はじめに
2 栽培化から品種改良へ
3 品種改良技術とは
4 品種改良の歴史
5 バイオテクノロジー利用の始まり
6 ゲノム編集技術を利用した育種の展望
7 おわりに

第16章 ゲノム編集技術による高機能作物の育種
1 はじめに
2 ゲノム編集を用いた植物の育種
3 ゲノム編集によるジャガイモの育種
4 翻訳エンハンサーdMac3を利用した高効率ゲノム編集技術
5 ジャガイモ・デンプンの質的改良
6 今後の展開

第17章 樹木のゲノム編集技術とスギの無花粉化
1 はじめに
2 樹木のゲノム編集技術
3 スギと花粉症
4 ゲノム編集技術による無花粉スギの作出
5 樹木のゲノム編集技術の今後の開発方向

第18章 CRISPR/Cas9とTarget-AIDを利用した有用形質トマトの開発
1 はじめに
2 トマト育種でのゲノム編集技術の必要性
3 トマトの重要育種形質と遺伝子突然変異
4 CRISPR/Cas9によるGABA高蓄積トマトの開発
5 Target-AIDによるリコピン高蓄積トマト開発の試み
6 ゲノム編集トマトの社会実装に向けて
7 おわりに

第19章 栄養繁殖性である四倍体ジャガイモのゲノム編集と社会実装に向けて
1 はじめに,ジャガイモについて
2 ゲノム編集ジャガイモの研究例
 2.1 低温貯蔵による糖化
 2.2 でん粉の改質
 2.3 ステロイドグリコアルカロイド生合成経路の破壊
3 ゲノム編集ジャガイモの社会実装に向けて

第20章 ゲノム編集作物の規制と社会受容
1 国内規制の概要
 1.1 カルタヘナ法(環境省)
 1.2 食品衛生法(厚生労働省)
2 海外諸国の規制動向
 2.1 アメリカ
 2.2 EU
 2.3 南米
 2.4 豪州
 2.5 ニュージーランド
3 消費者意識と社会受容
 3.1 ウェブアンケート
 3.2 グループディスカッション

【第5編:水畜産物への応用と用途展開】

第21章 マグロの家魚化に向けたゲノム編集技術による育種素材の開発
1 はじめに
2 マグロ養殖の現状と課題
3 マグロのゲノム編集
4 おとなしいマグロの作出
5 社会実装に向けた取り組み
6 おわりに

第22章 ゲノム編集技術による海産魚の新品種作出 -攻撃性を低下させたおとなしいマサバ-
1 はじめに
2 食用魚類の育種
3 完全養殖マサバ
4 マサバの受精卵を用いた基盤技術の整備
5 おとなしいマサバの作出
6 品種の保存・管理と周辺技術
7 おわりに

第23章 ゲノム編集技術を用いてニワトリの性決定機構を解析する
1 はじめに
2 家畜における雌雄の産み分け
3 家禽における雌雄の産み分け
4 ニワトリの性決定機構
5 おわりに

【第6編:医療への応用と課題】

第24章 ゲノム編集技術を用いたマウス作製と受精研究への応用
1 はじめに
2 CRISPR/Cas9を用いたマウス作製
 2.1 遺伝子改変マウスを作製する前に
 2.2 ゲノム編集マウスの作製方法
3 受精研究への応用
 3.1 精子と卵の細胞膜融合に関わる4遺伝子を15年ぶりに発見
 3.2 精子が子宮から卵管へと移行するのに必須な遺伝子群を発見
4 おわりに

第25章 超音波応答性ナノバブルのゲノム編集治療への応用の可能性
1 はじめに
2 超音波応答性ナノバブルによる核酸・遺伝子デリバリーシステム
3 超音波応答性ナノバブルによるゲノム編集ツールの導入
4 おわりに

第26章 ゲノム編集の医学的応用と倫理的課題
1 はじめに
2 体細胞と生殖細胞系列
3 生殖細胞系列を対象とするゲノム編集の臨床応用に伴う課題
4 国内外の規制の状況
5 日本における規制
6 国際的な場での対応
7 今後の課題
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