商品コード: RLB223098

生物の優れた機能から着想を得た新しいものづくり ―バイオミメティクスからの発展―

販売価格(税込): 100,100
ポイント: 910 Pt
メーカーURL: https://www.cmcbooks.co.jp/
■体裁:B5判・272頁
■発刊:2018年11月13日
■ISBNコード:978-4-7813-1354-2
■シーエムシー出版

【監修】
萩原良道

【刊行にあたって】
2011年3月の東日本大震災以降、多くの企業、とりわけものづくりに関連する多くの企業がイノベーションを積極的に検討してきた。検討対象のひとつに、バイオミメティクスあるいは生物模倣技術がある。しかしながら、従来のバイオミメティクスは、生物の置かれた状況を基にして、生物の表面の一部あるいは特徴的な運動などを研究対象としてきたために、革新的なものづくりに役立つ成果は多くなかった。
そのような状況に鑑み、生物の置かれた状況を越えた場合も視野に入れた、生物の機能・反応・運動から着想を得た研究成果(シーズ)と、省エネ・エコ・環境保全・大規模自然災害耐性に富む革新的なものづくり(ニーズ)の情報を交換する場の必要性が認識された。その結果、京都工芸繊維大学において、「生物の優れた機能から着想を得た新しいものづくりシンポジウム」が5回開催された。合計で54件の発表と330名以上の参加者があった。
本書は、このシンポジウムの発表者(代理を含む)および参加者の方々が分担して執筆された章からなる。なお、本書の構成は、機械工学における分野に基づいている。多忙にもかかわらず、快諾して頂いた執筆者の方々に、この場を借りてお礼申し上げる。
数年前から、Bio-inspired Engineeringの国際会議、論文、著書が急増している。本書がきっかけとなり、生物の優れた機能から着想を得た研究、およびそれをもとにしたものづくりがますます発展することが期待される。最後に、シンポジウムの実行委員(太田 稔氏、軽野 善行氏、澤田 祐一氏、中山 明氏、東 善之氏、増田 新氏)と参加したすべての方々、およびシーエムシー出版の福井 悠也氏に謝意を表す。

【著者】
萩原良道  京都工芸繊維大学
浦田千尋  (国研)産業技術総合研究所
Peter W. Wilson  University of Tasmania; University of South Florida
藤本信貴  住友精化(株)
桑原純平  筑波大学
神原貴樹  筑波大学
小方聡   首都大学東京
大保忠司  (株)荏原製作所
能見基彦  (株)荏原製作所
山中拓己  (株)コベルコ科研
福井智宏  京都工芸繊維大学
森西晃嗣  京都工芸繊維大学
伊藤慎一郎  工学院大学
米澤翔   京都工芸繊維大学
新谷充弘  山本光学(株)
山盛直樹  日本ペイントマリン(株)
松田雅之  日本ペイントマリン(株)
稲田孝明  (国研)産業技術総合研究所
小塩和弥  京都工芸繊維大学
田和貴純  第一工業製薬(株)
石川将次  京都工芸繊維大学
長谷川洋介  東京大学
中山雅敬  Max Planck Institute for Heart and Lung Research
麓耕二   青山学院大学
松本光央  京都工芸繊維大学
射場大輔  京都工芸繊維大学
本宮潤一  鳥取大学
柄谷肇   京都工芸繊維大学
安藤規泰  東京大学
木之下博  兵庫県立大学
山下かおり  大日本印刷(株)
中村太郎  中央大学
山田泰之  中央大学
東善之   京都工芸繊維大学
釜道紀浩  東京電機大学
高木賢太郎  名古屋大学

【目次】
序論
1 バイオミメティクス
2 Bio-inspired engineering
3 生物のかくれた機能・反応
4 シンポジウム
5 着想を得た生物
【第1編 材料】
第1章 生物の“分泌”から着想を得た環境適用可能な難付着性材料
1 はじめに
2 難付着性の評価方法
3 最近の撥液処理
3.1 潤滑された難付着表面(SLIPS)
3.2 SLIPSの課題
4 生物体表の粘液分泌から着想を得た難付着表面
4.1 葉脈状空洞の利用
4.2 ヤドクガエルの分泌腺からの着想
4.3 ナメクジ体表の粘液分泌からの着想
4.4 ミミズ体表の模倣
5 まとめ
第2章 Bio-inspired Slippery and Ice-repellent coatings-fast Growing Fields in Materials Science
1 ABSTRACT
2 Introduction
3 Background
4 SLIPS
4.1 Nucleation and ALTA
4.2 Adhesion of Ice
5 Ice Binding Proteins
6 Conclusion
第3章 鮮やかな光沢フィルムの開発と展開
1 はじめに
2 金属光沢をもつ有機材料
2.1 π共役系チオフェン-ピロール系有機化合物
2.2 アゾベンゼン基を有する有機化合物
2.3 チオフェン系オリゴマー
3 金属光沢をもつ含色素ポリアニリン類縁体
3.1 含色素ポリアニリン類縁体の合成
3.2 光学特性
3.2.1 色度
3.2.2 光沢度
3.2.3 反射光
3.2.4 金属調光沢の発現機構
3.2.5 電磁波透過性
3.2.6 その他の色素ポリマー
4 おわりに
【第2編 流体】
第1章 寒天ゲルを利用した流れの抵抗低減
1 はじめに
2 装置および方法
2.1 供試寒天ゲル壁
2.2 矩形流路実験装置
2.3 流路高さ測定
2.4 染み込み深さ測定
2.5 抗力測定
3 実験結果および考察
3.1 圧力損失測定結果
3.2 染み込み深さ測定結果
3.3 抗力測定結果
3.4 低減メカニズムの考察
4 おわりに
第2章 小型飛翔機械の開発に向けたトンボの空力制御研究
1 はじめに
2 トンボの空力計算モデル構築
2.1 数値流体力学(CFD)
2.2 空力計算モデルのモデル形状
2.3 空力計算モデルのメッシュ
2.4 使用する計算スキーム
3 飛行条件と評価結果
3.1 飛行条件
3.2 ピッチング運動が空気流動に与える影響
3.3 前後翅位相差が空力に与える影響
4 まとめ
第3章 昆虫規範型ロボットのはばたき位相差が飛翔特性に及ぼす影響
1 初めに
2 供試対象トンボ規範型ロボット(MAV)
3 実験
3.1 自律飛行実験
3.2 風洞試験
3.3 可視化実験
4 実験結果と考察
4.1 飛行実験と流体力試験結果
4.2 可視化実験結果
5 終わりに
第4章 イルカの表皮から着想を得た波状面による乱流摩擦抵抗低減
1 はじめに
2 圧力抵抗
3 摩擦抵抗
3.1 イルカの皮膚
3.2 皮膚の剥がれ
3.3 柔軟壁
3.4 二次元波状面
3.5 有限幅の固体波状面
3.6 硬度の異なる波状面
3.7 微細溝を有する波状面
4 おわりに
第5章 開水路底面に配置された角錐台の波状表面による圧力抗力および摩擦抗力の低減効果の検証
1 はじめに
2 イルカの抵抗低減
2.1 圧力抗力の減少
2.2 摩擦抗力の減少
3 立体物への応用
4 実験方法
4.1 実験装置
4.2 角錐台
5 計測手法
5.1 全抗力計測手法
5.2 速度計測手法
5.3 差圧計測手法
6 結果および考察
6.1 全抗力
6.2 摩擦抗力
6.3 圧力抗力
6.4 循環流の影響
7 おわりに
第6章 海洋生物にヒントを得た超低燃費型船底防汚塗料の開発
1 付着生物との闘い
2 最近の船底防汚塗料
2.1 はじめに
2.2 拡散型防汚塗料
2.3 自己研磨型防汚塗料
2.4 崩壊型防汚塗料
3 高速遊泳能力を持つ海洋生物の知恵に学ぶ
3.1 サメ
3.2 ペンギン
3.3 イルカ
3.4 マグロ
4 低摩擦船底防汚塗料
4.1 社会的背景
4.2 バイオミメティックから塗料へ
4.3 船舶の抵抗成分
4.4 低摩擦船底塗料(LFC)
4.4.1 低摩擦船底塗料の効果の検証
4.4.2 低摩擦船底塗料の摩擦抵抗低減効果
4.5 超低摩擦船底塗料(A-LFC)
4.5.1 超低摩擦船底塗料の効果の検証
4.6 ヒドロゲルによる燃費低減効果の推定メカニズム
5 おわりに
【第3編 熱】
第1章 不凍タンパク質の機能を活用した氷の核生成抑制技術
1 不凍タンパク質(AFP)の機能
2 氷の核生成抑制
3 過冷却器凍結閉塞防止への応用技術
4 おわりに
第2章 冬カレイ由来の不凍タンパク質の代替物質であるポリペプチドを用いた着氷を抑制する機能表面
1 はじめに
2 機能表面の創製
3 着氷防止
4 防氷性に関する測定・評価
5 除氷性に関する測定・評価
6 おわりに
第3章 セルロースナノファイバーの氷結晶成長抑制能について
1 はじめに
2 ナノセルロースについて
2.1 CNFの調製方法
2.2 TEMPO酸化によるCNFの調製
3 実験
3.1 一方向凍結試験による氷成長界面形状,界面温度低下度および成長速度の測定
3.2 試料
4 結果・考察
4.1 各セルロース系試料液における氷成長界面形状の観察
4.2 界面温度低下度の評価
4.3 界面成長速度の評価
5 結論
6 TOCNFの氷結晶成長抑制能の応用
第4章 冬カレイから着想を得た微細流路内氷スラリー流の氷成長・融解の制御
1 研究背景
2 研究目的
3 研究方法
3.1 観察装置
3.2 氷スラリー生成装置
4 氷粒子融解へのHPLC6の影響
4.1 速度計測
4.1.1 計測手法
4.1.2 氷スラリー流の速度計測結果
4.1.3 氷粒子塊の移動速度へのHPLC6の影響
4.2 濃度計測
4.2.1 計測手法
4.2.2 計測結果
5 氷粒子融解へのポリペプチドの影響
5.1 静止水溶液中の氷粒子の観察
5.2 静止水溶液中の氷粒子計測
5.3 水溶液流中の氷粒子計測
6 おわりに
第5章 毛細血管リモデリングと流路ネットワーク最適化
1 生体血管網における分岐パターン
2 工学と流路ネットワーク最適化
3 毛細血管網の形成プロセス
4 最適制御理論に基づく流路ネットワーク最適化
5 まとめ
第6章 生物の組織形状に由来する微小空間用熱交換器に関する基礎的研究
1 はじめに
2 魚の鰓(エラ)形状に由来する狭隘空間用高効率熱交換器に関する基礎的研究
3 赤血球の血管内ずり流動に由来する高効率熱・物質熱輸送システムに関する基礎的研究
3.1 吸水性ポリマーについて
3.2 アルギン酸カルシウムビーズについて
4 まとめと今後の展望
第7章 イルカの表皮のしわとはがれからヒントを得たすべり波状面の乱流摩擦抵抗と熱伝達に関する数値シミュレーション
1 はじめに
2 イルカの皮膚
2.1 皮膚のしわ
2.2 皮膚の剥がれ
3 計算方法
3.1 計算領域
3.2 支配方程式の解法
3.3 計算条件
3.4 境界条件
4 計算結果と考察
4.1 せん断応力
4.2 乱流熱流束と平均ヌセルト数
5 おわりに
【第4編 計測制御】
第1章 生物の歩行に学ぶアクティブ振動制御
1 研究背景
2 アクティブ動吸振器による高層構造物の制振
2.1 構造物用制振装置としてのパッシブ動吸振器
2.2 アクティブ動吸振器とその課題
3 神経振動子を利用するアクティブ動吸振器用の制御系
3.1 神経振動子
3.2 神経振動子と位置制御器を利用したアクティブ動吸振器制御システム
4 神経振動子を組み込んだ制振システムの制御アルゴリズム
4.1 制御系の概要
4.2 制御アルゴリズムの定式化
4.2.1 制御対象
4.2.2 神経振動子
4.2.3 神経振動子に含まれる構造物の応答情報
4.2.4 補助質量の目標変位生成法
4.2.5 補助質量の位置制御器
5 位置制御器のゲイン設計法
5.1 構造物と補助質量の相対運動と消散エネルギの関係
5.2 PDゲイン設計法
6 数値シミュレーション
6.1 提案したシステムの制振効果
6.2 補助質量のストローク制約
7 おわりに
第2章 バイオセンサー構築のための発光細菌発光機能の他細胞系における部分的再構成
1 はじめに
2 生物発光関連化学
3 細菌生物発光機能
4 Y1-Yellowによるミトコンドリアの可視化
5 生物発光による環境毒性のセンシング
6 Cd2+-H2O2共添加による発光応答
第3章 昆虫-機械ハイブリッドロボットが拓く昆虫模倣匂い源探索ロボットの未来
1 はじめに
2 生物の匂い源探索行動
2.1 匂いの分布と受容
2.2 濃度勾配を利用した探索
2.3 濃度勾配を利用しない探索
2.4 複数感覚の統合
3 昆虫模倣ロボット:理想と現実
3.1 神経科学とロボット
3.2 生物行動のバイオミメティクス
3.3 どこまで生物を理解する必要があるのか
4 昆虫-機械ハイブリッドロボット
4.1 昆虫操縦型ロボットのしくみ
4.2 昆虫操縦型ロボットの匂い源探索能力
4.3 未来の匂い源探索ロボットで実験する
5 まとめと展望
第4章 トカゲの巧みな摩擦戦略-ヤモリの手の高グリップ力とサンドフィッシュの鱗の低摩擦・低摩耗-
1 はじめに
2 ヤモリの手の高いグリップ力
3 サンドフィッシュの鱗の低摩擦・低摩耗
4 まとめ
【第5編 設計・加工】
第1章 ナノインプリントテクノロジーとバイオミメティクス
1 印刷技術の応用(ナノインプリントテクノロジー)とバイオミメティクス
2 ナノインプリントテクノロジーによる生物表面を模倣した微細凹凸フィルム
3 生物表面の微細凹凸構造の持つ多機能性
3.1 超撥水性と超親水性
3.2 超低反射性
3.3 抗菌性・防カビ性
4 終わりに
【第6編 ロボティクス】
第1章 ソフトアクチュエーションによる生物型ロボティクス・メカトロニクス
1 はじめに
2 生物型ロボットとソフトアクチュエータ
3 ソフトアクチュエーションとしての人工筋肉
3.1 空気圧人工筋肉
3.2 軸方向繊維強化型人工筋肉
4 ミミズの蠕動運動による移動手法を利用した管内検査ロボット
4.1 ミミズの蠕動運動について
4.2 空気圧人工筋肉による蠕動運動の実現
4.3 ミミズロボットの応用事例
4.3.1 大腸内視鏡推進補助装置
4.3.2 工業用内視鏡ロボット
5 大腸の蠕動運動を規範とした固液2相・高粘度流体の混合搬送機
5.1 様々な物体を運ぶ・混ぜる腸管の優れた機能を応用
5.2 蠕動運動型混合搬送機
5.3 蠕動運動型混合搬送機の応用
5.3.1 優しくかつ高速に粉体を運ぶ
5.3.2 柔らかく安全に連続的に混ぜて運ぶ―固体推進薬製造への応用―
6 おわりに
第2章 Clap and Flingを利用した羽ばたき翼型飛行ロボットの開発について
1 緒論
2 羽ばたき翼における高揚力メカニズム
3 羽ばたき機構
4 翼のつくりと推力
5 羽の実験的最適化
5.1 羽ばたきロボット
5.2 計測装置
5.3 実験方法
5.4 実験結果
5.4.1 4パターンのアスペクト比による比較
5.4.2 3パターンの剛性による比較
5.4.3 アスペクト比,剛性,ギア比を含めた比較
5.4.4 空気合力による比較
5.5 実験結果
6 自立・自律飛行実験
6.1 羽ばたきロボットの概要
6.2 ピッチング抑制制御
6.3 実験方法
6.4 実験結果
7 結言
第3章 高分子素材のソフトアクチュエータと生物模倣ロボットへの応用
1 高分子アクチュエータ
2 電場応答性高分子材料
2.1 誘電エラストマアクチュエータ
2.2 導電性高分子アクチュエータ
2.3 イオン導電性高分子アクチュエータ
3 EAPの利用法
3.1 駆動方法
3.2 センサ利用
4 生物模倣ロボットへの応用
4.1 水中推進ロボット
4.2 歩行ロボットや他の生物模倣ロボット
4.3 ヘビ型推進ロボットの例
5 おわりに
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