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RLB223116
細胞・生体分子の固定化と機能発現
販売価格(税込):
88,000
円
ポイント:
800
Pt
■体裁:B5判・294頁
■発刊:2018年4月24日
■ISBNコード:978-4-7813-1326-9
■シーエムシー出版
【監修】
黒田章夫
【刊行にあたって】
細胞・生体分子の固定化は、1960年代の固定化酵素の技術開発から始まり、1970年代に入り固定化微生物へと進化した。生体分子の固定化により繰り返し利用できること、また固定化による生体分子の安定化によって非水系でも利用できる等の利点から、これまで多くのバイオリアクターとして工業的に用いられてきた。固定化酵素と固定化微生物の工業利用は、いずれも我が国が世界にさきがけて工業化に成功したことが知られている。
近年では、細胞及び生体分子の機能をさらに効率的に発現させるために、配向性を向上させた固定化技術や非共有結合による固定化によって活性を維持する技術、さらに複数の酵素を組み合わせた固定化技術などが開発され進化を続けている。また、バイオリアクターとしての利用に留まらず、例えばバイオセンサーとして用いるための酵素や抗体の固定化技術も開発されてきた。また、固定化される生物は、微生物から、より取り扱いの難しい動物細胞へと進化しており、医療への応用が考えられている。
一方、固定化される担体や材料からみた場合、その表面が修飾されることで新たな機能が付与される。例えば、バイオ分子の特異性を利用した吸着体として機能したり、ハイブリッドな性質を持つ生体融合材料が誕生したりする。また固定化する際に生体分子を蛍光で修飾しておけば、材料の動態を解析するツールとして利用することもできる。固定化される生体分子も機能ペプチドやDNA、さらには膜など多岐に渡り、様々な応用が考えられている。
本書では、本分野の第一線の研究者により、細胞・生体分子の固定化と機能発現に関して執筆頂いている。第1編では酵素・抗体の固定化、第2編では細胞の固定化、第3編では核酸やペプチドなどの生体物質の固定化を中心に、技術的な進展や固定化した場合の機能発現について執筆頂いている。また本書の特徴として、近年の研究開発により可能になった細胞・生体分子の固定化技術の具体的な操作手順や実験条件、素材、器具の情報を含めて記載頂いている。本書が様々な機関において固定化操作を実際に試す一助となることにより、本分野が益々発展することを期待している。
黒田章夫
(「はじめに」より一部抜粋)
【著者】
黒田章夫 広島大学
宇野重康 立命館大学
河原翔梧 立命館大学
藤本拓也 立命館大学
平川秀彦 東京大学(現在 筑波大学)
松本拓也 神戸大学
田中勉 神戸大学
高辻義行 九州工業大学
春山哲也 九州工業大学
高原茉莉 北九州工業高等専門学校
神谷典穂 九州大学
今中洋行 岡山大学
伊藤敏幸 鳥取大学
李仁榮 東京農工大学
早出広司 ノースカロライナ大学
松浦俊一 産業技術総合研究所
池田丈 広島大学
清田雄平 北海道大学
山口浩 東海大学
宮崎真佐也 北海道大学;産業技術総合研究所
重藤元 産業技術総合研究所
舟橋久景 広島大学
中村史 産業技術総合研究所
飯嶋益巳 大阪大学(現在 東京農業大学)
黒田俊一 大阪大学
金美海 大阪大学
足立収生 山口大学
松下一信 山口大学
堀克敏 名古屋大学
柿木佐知朗 関西大学
山岡哲二 国立循環器病研究センター
木野邦器 早稲田大学
古屋俊樹 東京理科大学
加納健司 京都大学
民谷栄一 大阪大学
上野絹子 東京農工大学
池袋一典 東京農工大学
蟹江慧 名古屋大学
加藤竜司 名古屋大学
本多裕之 名古屋大学
小路久敬 東レ・メディカル㈱
飯塚 怜 東京大学
船津高志 東京大学
新地浩之 鹿児島大学
若尾雅広 鹿児島大学
隅田泰生 鹿児島大学
田口哲志 物質・材料研究機構
田畑美幸 東京医科医歯科大学
宮原裕二 東京医科医歯科大学
近藤敏啓 お茶の水女子大学
佐藤 縁 産業技術総合研究所
魚崎浩平 物質・材料研究機構
石田丈典 広島大学
【目次】
【第1編 酵素、抗体の固定化と機能発現】
第1章 紙ベースの酵素固定化とバイオケミカルセンサー
1 はじめに
2 ペーパーバイオケミカルセンサーと酵素固定化
3 溶液中グルコース測定用ペーパーバイオケミカルセンサー
4 気体中エタノール測定用ペーパーバイオケミカルセンサー
5 まとめ
第2章 ヘテロ三量体タンパク質を利用したシトクロムP450モノオキシゲナーゼの効果的固定化
1 はじめに
2 Sulfolobus solfataricus由来核内増殖抗原を利用した担体固定のコンセプト
3 融合タンパク質の構築
4 タンパク質の発現・精製
5 固定化PUPPETの調製
6 固定化PUPPETの活性評価
7 おわりに
第3章 Sortase Aを用いたタンパク質配向固定化技術の開発
1 はじめに
2 酵素を用いたタンパク質固定化法
3 Sortase Aとは
4 Sortase Aを用いたタンパク質修飾技術
5 Sortase Aを用いたタンパク質配向固定化技術
6 おわりに
第4章 電気化学反応や自己組織化による分子固定化技術と応用:ペプチドからタンパク質分子まで
1 はじめに
2 電気化学反応を利用した分子固定化法(EC tag法)
2.1 ペプチドタグ
2.2 EC tagによる分子の電解固定化1:ペプチドの固定化
2.3 EC tagによる分子の電解固定化1:タンパク質分子の固定化
3 自己組織化タンパク質を分子キャリアとするタンパク質分子固定化法(HFBドロップスタンプ法)
3.1 HFBを分子キャリアとして利用した酵素の揺動固定化による固定化酵素の活性向上
第5章 セルロース結合性アプタマーを用いた人工セルラーゼの設計
1 はじめに
2 セルロース結合性DNAの性質及び配列設計
3 微生物由来トランスグルタミナーゼ (MTG) を用いた人工セルラーゼの合成
4 人工セルラーゼと天然セルラーゼの比較
5 おわりに
第6章 クッションタンパク質を用いたリガンド分子固定化法の開発と利用
1 はじめに
2 リガンド生体分子の固体表面への固定化方法
3 リガンド分子デザインとクッションタンパク質の利用
4 各種クッションタンパク質を用いたリガンド生体分子の機能的固定化
4.1 RNaseHII(HII)
4.2 CutA1(Cut)
5 おわりに
第7章 イオン液体溶媒による固定化リパーゼの繰り返し利用システム
1 はじめに
2 イオン液体を溶媒とするリパーゼ触媒不斉シアル化反応
3 減圧条件を使用するリパーゼ繰り返し利用システム
4 イオン液体のデザインによるリパーゼ繰り返し使用システムの構築
5 イオン液体コーティング酵素の開発と繰り返し使用システム
6 おわりに
第8章 グルコースデヒドロゲナーゼの固定化と電気化学センサー
~自己組織化単分子膜による直接電子移動型FAD依存型グルコース脱水素酵素の固定化~
1 緒論
2 実験内容
3 まとめ
第9章 Si-tagを用いた酵素の固定化と利用
1 はじめに
2 シリカ結合タンパク質「Si-tag」を接着分子としたタンパク質固定化
3 Si-tagを用いたプロテアーゼの固定化による材料表面の抗バイオフィルム化
4 Si-tagを用いたメソポーラスシリカへの複数酵素集積化による効率的物質生産
5 おわりに
第10章 酵素の安定性を向上させる固定化技術の開発とマイクロリアクターへの応用
1 はじめに
2 担体表面への酵素の固定化法による酵素の安定化
3 グルタルアルデヒドおよびパラホルムアルデヒドによるマイクロ流路への酵素固定化
4 Poly-L-Lysineを用いたマイクロ流路への酵素固定化
5 酵素固定化法のマイクロリアクターへの応用
6 まとめ
第11章 インスリン検出用タンパク質プローブを細胞膜表面に固定したセンサー細胞の開発
1 はじめに
2 インスリン挙動解析の意義
3 ホモジニアスアッセイ用プローブの開発
4 タンパク質プローブを細胞膜表面に固定したセンサー細胞の開発
5 インスリンセンサー細胞を用いた単一細胞レベルのインスリン分泌応答モニタリング
6 おわりに
第12章 抗体を固定したナノニードルによる細胞解析と細胞分離
1 はじめに
2 抗体修飾ナノニードルによる骨格タンパク質の検出
3 抗体修飾ナノニードルアレイによる細胞の機械的分離
4 おわりに
第13章 バイオナノカプセル足場分子を用いた抗体の精密整列固定化とバイオセンシング技術への応用
1 はじめに
2 バイオナノカプセル
3 液相中ZZ-BNCを用いた抗体の精密整列固定化およびバイオセンシングの高感度化
3.1 酵素標識免疫測定法
3.1.1 直接法
3.1.2 サンドイッチ法
3.2 多重蛍光免疫測定法(IRODORI法)
4 固相上ZZ-BNCを用いた抗体の精密整列固定化およびバイオセンシングの高感度化
4.1 水晶発振子微量天秤法
4.2 表面プラズモン共鳴法
5 固相上ZZ-BNCを用いたFc融合受容体の精密整列固定化およびバイオセンシングの高感度化
6 おわりに
【第2編 細胞の固定化と機能発現】
第14章 細胞挙動を操作するデンドリマー培養面の設計に基づく細胞機能の制御
1 はじめに
2 細胞挙動を操作する細胞外環境場の設計
3 細胞の挙動を変えるデンドリマー培養面の設計
4 幹細胞の挙動操作に基づく未分化 / 分化誘導の制御
4.1 未分化維持
4.2 分化方向性の制御
5 細胞・組織などの反応場の設計概念
6 おわりに
第15章 固定化酢酸菌触媒の産業への応用
1 はじめに
2 固定化酢酸菌による食酢の製造
3 アルギン酸カルシウムゲルを担体とした固定化酢酸菌による食酢製造
4 酢酸菌の固定化触媒によるキナ酸の酸化と有用物質の生産
5 固定化酢酸菌による新規な酸化糖の製造
6 固定化酢酸菌を利用した食品の不快臭の低減
第16章 微生物ナノファイバーを用いた可逆的な微生物細胞固定化技術
1 はじめに
2 従来の微生物細胞固定化技術と問題点
3 高付着性微生物Acinetobacter属細菌Tol 5株と接着ナノファイバータンパク質AtaA
4 AtaAの特性
5 AtaAによる微生物固定化法の革新
6 おわりに
第17章 リガンドペプチドのシングルステップ固定化技術の開発とバイオアクティブ医療機器への展開
1 はじめに
2 リガンドペプチド固定化界面の設計指針
3 ECM タンパク質や細胞増殖因子に含まれるリガンド配列
4 バイオアクティブ化の対象となる医療機器基材
5 医療基材へのリガンドペプチドのシングルステップ固定化技術
6 まとめ
第18章 固定化微生物・酵素を用いた有用物質生産法の技術開発
1 はじめに
2 微生物・酵素を利用したバニリン生産
3 補酵素非依存型酵素を利用したバニリン生産
4 固定化酵素を利用したバニリン生産
5 固定化微生物を利用したバニリン生産
6 おわりに
第19章 酵素バイオ電池の基礎技術と新展開
1 生物の持つエネルギー変換機能
2 酵素機能電極反応
3 MET型酵素機能電極
4 DET型酵素機能電極反応
5 バイオ電池の現状
【第3編 生体物質の固定化と機能発現】
第20章 プリンタブル電気化学バイオセンサーの開発
1 はじめに
2 プリンタブル電極を用いたモバイルバイオセンサー
3 酵素の固定化と酵素センサーの特製評価
4 プリンタブル電極を用いた酵素センサー
5 プリンタブル電極を用いた遺伝子センサー,免疫センサーへの応用
6 さいごに
第21章 DNA アプタマーの固定化とセンサーへの利用
1 はじめに
2 アプタマーの固定化法
2.1 吸着法
2.2 包括法
2.3 共有結合法
2.3.1 Au-S結合の利用
2.3.2 アミノ基を利用した共有結合形成
2.3.3 シリコン,ガラス表面への固定化
2.3.4 相補鎖を利用した固定化
3 固定化アプタマーの様々な応用
3.1 コレステロール標識アプタマー
3.2 アプタマーを利用した酵素等の固定化
3.3 DNAプローブとハイブリダイゼーションさせた固定化アプタマーを利用したstrand displacement assay
3.4 アプタマーの構造変化を利用したBound/ Free separation
第22章 ペプチドアレイを用いた新規機能性ペプチドの探索
1 はじめに~ペプチドアレイの可能性~
2 細胞死誘導ペプチド探索
3 細胞接着ペプチド探索
4 細胞増殖・分化誘導ペプチド探索
5 細胞内機能性ペプチド探索
6 まとめ
第23章 エンドトキシン吸着体の固定化と血液吸着療法
1 はじめに
2 海外で開発されたエンドトキシン吸着カラム
2.1 Alteco® LPS Adsorber
2.2 Toxipak®
2.3 Desepta®-LPS
3 ポリミキシンB固定化繊維カラム (トレミキシン®)の設計
3.1 吸着材担体の設計
3.2 リガンドとしてのポリミキシンB
3.3 吸着材担体へのポリミキシンBの固定化制御
4 ポリミキシンB固定化繊維および血液吸着カラムの性能評価
4.1 種類の異なるLPSに対する吸着性能
4.2 ポリミキシンB固定化繊維カラムの灌流吸着性能
5 トレミキシン®カラムの臨床効果
5.1 臨床使用での血中エンドトキシンレベルの低下
5.2 臓器不全の改善
5.3 生存率の改善
6 おわりに
第24章 固定化リボソームを用いたタンパク質合成の一分子イメージング
1 はじめに
2 リボソームの構造・固定化
2.1 rRNAのビオチン化
2.2 リボソームタンパク質のビオチン化
3 固定化リボソームを用いたタンパク質合成の一分子イメージング
3.1 Tethered particle motion法によるタンパク質合成の一分子イメージング
3.2 リボソームディスプレイによるタンパク質合成の一分子イメージング
3.3 光ピンセットを利用したタンパク質合成の一分子イメージング
4 おわりに
第25章 糖鎖固定化蛍光性ナノ粒子の開発とその利用
1 はじめに
2 糖鎖を蛍光性ナノ粒子に固定化する方法
3 糖鎖結合性タンパク質との相互作用解析
4 ギラン・バレー症候群簡易検査診断法への応用
5 おわりに
第26章 血管内皮細胞増殖因子固定化ニッケルフリー高窒素ステンレス鋼
1 はじめに
2 血管内皮細胞増殖因子固定化ニッケルフリー高窒素鋼の調製
3 血管内皮細胞増殖因子固定化ニッケルフリー高窒素鋼の生物学的活性評価
4 おわりに
第27章 バイオトランジスタ界面への生体分子固定化技術と機能解析
1 はじめに
2 バイオトランジスタ界面への生体分子固定化技術
2.1 シランカップリング
2.2 チオール系自己組織化膜
2.3 その他
3 バイオトランジスタによる生体分子機能解析
3.1 シアル酸定量トランジスタ
3.2 トランスポーター活性評価トランジスタ
3.3 浮遊細胞機能解析トランジスタ
4 おわりに
第28章 自己組織化単分子層の構築と固体表面への機能付与
1 はじめに
2 光誘起電子移動機能の付与
3 糖鎖部位を有するSAMを利用した機能付与
4 非特異吸着抑制能の重要性とSAM
5 おわりに
第29章 アスベスト結合ペプチドによる標識化とライブセルイメージングによる毒性解析への展開
1 はじめに
2 アスベストの問題
3 アスベスト結合ペプチドと蛍光プローブ
3.1 無機物質に結合するペプチドの研究
3.2 細胞内タンパク質から無機結合タンパク質/ペプチドを選択する
3.3 アスベスト蛍光プローブを使った新しい検査方法
4 アスベストの細胞毒性における未解明な問題
5 アスベスト蛍光プローブを用いたライブセルイメージングと毒性解析
6 おわり